早春の十勝千年の森で、座禅草という頭巾小人に出逢う

 日高山脈の麓の澄んだ空気たっぷり、春の透明な日差しもたっぷり。野鳥のさえずりと小川のせせらぎを耳に、ぬくまってきた大地からニョキニョキと顔を出した植物たちに会いに、十勝千年の森へ行ってきました。

 まずはエゾノリュウキンカ ’ Asian Marsh Marigold ’ 。小川のそばにたくさん咲いていました。まだまだ、本番はこれからよ、とでも言いたげに。

 花言葉は「必ず来る幸福」。北国では、春の訪れがことのほか嬉しく、まさに春を迎える幸せを、明るい黄色と共に与えてくれるこの花にぴったりですね。ここ北海道ではヤチブキとも呼ばれます。お浸しにすると美味しいのだと聞いて以来、美しいというよりも確かに美味しそうだな、と思ってしまうのが食いしん坊というもの。いつか、たっくさんの群れに出会ったら、ほんの少しお裾分け、いただいてみようかしらん。

 

 最初に歩く林、エントランス・フォレストの中をツイー、ツイー、と大きな声で鳴くは、シロハラゴジュウカラ。我が家の庭の住人でもあり、さして珍しい鳥ではないけれど、この方もなかなか特徴的な可愛らしい姿形をしています。木の幹を垂直にどんどん登っていくのが、この鳥の特徴。そんな小さき鳥たちの姿を愛でながら、今日の目的となる場所へ向かいます。

 遠くそびえる日高山脈は、まだまだ真っ白な雪化粧。ふかふか芝生のアースガーデンを歩きつつ、改めてこのガーデンのほどなく近くに住んでいる幸運に思い馳せます。 私は、これほど雄大な背景とガーデンが溶け込んだ景色は、唯一無二ではないかと、来るたびに感じているのです。荒々しく険しい日高山脈。その麓に広がる雄大な大地。その風景が、英国のランドスケープデザイナーのダン・ピアソン氏の腕前によって、驚くほど洗練された庭へと溶け込んでいるのです。本当に、いつ、どこを切りとっても美しく、このガーデンのことを語りだすと、巻き物くらいに長くなってしまう恐れがありますので、今回は省きますがね…。

 さてさて、その緑で広々と柔らかな芝生をてくてくと歩き、小川の岩をとんとんとん、とステップして向こう岸へ渡ったら、目的地のフォレストガーデンへ到着です。ここも山からやってくる川の通り道で、春は光降り注ぐ落葉広葉樹の林。この川沿いに、水芭蕉たちは咲きそろっていました。

 すぅっと上に上に真っ白な花弁を立ち上げ、それを支えるように逞しく分厚い黄緑の葉が寄り添います。この葉、何かにとてつもなく似ている、と思いきや、ロメインレタス!形も色も質感も、そっくりではありませんか?!花弁も、目が覚めるくらいにしみひとつない、純白そのものです。しべの形も黄色も良いねぇ。しげしげと眺めていると、川のせせらぎが妙に心地良く、私も水芭蕉の仲間になりたい気持ちになってきます。

 そして私、なぜか今年は無性に座禅草 ’ Eastern Skunk Cabbage ’ をこの目で観察してみたかったのです。枯れ葉の残る地面の上、するすると視線を滑らせていくと、あっ!いました、いました!ワインレッドのタージマハルがニョキニョキと。あそこにも、ここにも!決して沢山ではないけれど、チラホラと顔を覗かせています。

 すん、と上へ伸びているものから、くにゃりと頭のてっぺんが曲がったもの、今にも地面に顔がつきそうなくらいに突っ伏したものなど、色々な方がおられました。それがまるで頭巾を被っている小人のように思えてきて、無性に愛らしく感じてしまいました。

その中におられるのが、座禅を組んだ僧侶様なのでしょうか。。。
可愛らしい、ピクミンのような頭巾
よくよく見ると、あそこにもここにも!頭巾小人=ホビットの登場!?

 この独特の姿形にすっかり魅せられて心はウキウキ。春の妖精(小人)に出会った気分。

 座禅という名は、このタージマハルの中の空洞の蕊が、座禅を組んでいる僧侶のように見えたからなの?そんなことを想像しつつ、十勝千年の森のインスタグラムでスタッフさんが書いておられた、「座禅草も水芭蕉も英語ではSkunk Cabbageというんです」というお話を思い出します。

 スカンクのキャベツ?!なんて滑稽な名前でしょう。座禅草や水芭蕉といった何かしら尊い印象の和名とは真逆の、これまた独特のクセ強めな名前です。

 におうのか?きっとそうなんだろう。近づけないから、嗅ぐことはできないけれど。スカンクというからには、顔が歪むほどに強烈な臭いなんだろうな、と想像しつつ調べてみると、中でも特に座禅草は強烈な悪臭を放つそうです。葉や茎を傷つけたときに。そして、それはハエや甲虫などの「腐肉食の昆虫」を引き寄せて受粉を助けてもらうための彼らの戦略なのだそうです。あぁ、傷つけられると(怒り狂って)悪臭を放つなんて、ますますホビット感が増してきます。

 キャベツの名がついた由来は、花が終わったこれらの植物は、春の深まりとともに非常に大きく肉厚で青々とした葉を展開するそうです。その広がり方がキャベツそっくりなので、この名前がついたとか。これ、今後も観察して確認せねばなりませぬ。

 そしてまた、驚くべきことに座禅草には、「自らが発熱する」というとても珍しい性質があるのだそうです。氷点下の中、自らの熱で雪を溶かし、いち早く地面から顔を出す。そして、その熱によって自らの悪臭をより遠くまで効率的に届かせ、冬眠から目覚めたばかりの虫たちを誘き寄せるんだって!!

面白すぎる!

臭くて、熱い座禅草。恐ろしい子!決して彼らを怒らせてはなりませぬぞ。

 それにしても自然ってなんて面白い仕組みを、戦略を、思いつくのでしょうか。

決してスマートではなく、どこか不器用で、ヘンテコで、それでも春一番に顔を出す座禅草。

そんな”頭巾小人”たちにすっかり心を掴まれながら、私は春一番の十勝千年の森を後にしたのでした。

この日の様子はコチラからもご覧いただけます♪

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